ビタミンD

 アメリカ・カナダの食事摂取基準では成人のビタミン D の推奨量を 15 µg/d としています.日照による産生されるビタミン D 7.5 µg/d を差し引いた 7.5 µg/d が 1 日における必要量と考えられますが,その他にも考慮すべき要因が多数あると考えられ,2010 年版の日本人の食事摂取基準の目安量を変更するに足る根拠がなく 5.5 µg/d のままとなっています.2010 年版では平成 17 年および 18 年の国民健康・栄養調査の 50-69 歳の摂取量の中央値を基に 5.5 µg/d を目安量に設定しています.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2011 年版では 10-20 µg/d を推奨していますが,高齢者全体に適用できるか否かは更に検討を要するとして成人と同じ 5.5 µg/d を目安量としています.

 小児についてはビタミン D 摂取量と血中濃度の比較を行った研究に乏しく,成人の目安量から体重比の 0.75 乗を用いて体表面積を外挿し小児の目安量を設定しました.

 乳児については母乳中のビタミン D 濃度から目安量を算出するのではなく,くる病防止の観点から目安量を設定しました.アメリカ小児科学会では 2003 年のガイドラインにおいてくる病防止のため 5 µg/d を設定しましたが,2008 年のガイドラインでは 10 µg/d と設定しました.2008 年のガイドラインは実現困難として 0-5 ヶ月児の目安量を 5 µg/d と設定しました.6-11 ヶ月児については十分な日照を受けられる場合 5 µg/d と設定し,十分ない日照を受けられない場合もデータが不十分なため 5 µg/d と設定しました.

 妊婦については 7.0 µg/d 以上のビタミン D 摂取量ではビタミン D 不足は認められなかったことから,目安量を 7.0 µg/d と設定しました.授乳婦については母乳中のビタミン D 濃度 3.0 µg/L に基準哺乳量 0.78 L/d を乗じて丸めを行った 2.5 µg/d を成人の目安量に加え, 8.0 µg/d としました.

 ビタミン D の食事摂取基準は 2010 年版と 2015 年版では耐用上限量が変更されています.主に成人の耐用上限量が 50 µg/d から 100 µg/d に変更されています.それに伴い,小児における耐用上限量も変更されています.ビタミン D については参考となる報告が不足しており,研究の充実が求められています.

 ビタミン D は食事から摂取されるほか,皮膚で紫外線により生成されます.ビタミン D の作用は腸管からのカルシウムとリンの吸収を促進することであり,ビタミン D が欠乏すると低カルシウム血症となります.その結果二次性副甲状腺機能亢進症となり,小児ではくる病,成人では骨軟化症,高齢者では骨粗鬆症となります.ビタミン D 過剰では高カルシウム血症,腎障害,軟組織の石灰化を引き起こします.

ビタミン D の食事摂取基準 (µg/d)(2015 年版)
性別 男性 女性
年齢 目安量 耐用上限量 目安量 耐用上限量
0-5 M 5.0 25 5.0 25
6-11 M 5.0 25 5.0 25
1-2 2.0 20 2.0 20
3-5 2.5 30 2.5 30
6-7 3.0 40 3.0 40
8-9 3.5 40 3.5 40
10-11 4.5 60 4.5 60
12-14 5.5 80 5.5 80
15-17 6.0 90 6.0 90
18-29 5.5 100 5.5 100
30-49 5.5 100 5.5 100
50-69 5.5 100 5.5 100
70- 5.5 100 5.5 100
妊婦 7.0
授乳婦 8.0
ビタミン D の食事摂取基準 (µg/d)(2010 年版)
性別 男性 女性
年齢 目安量 耐用上限量 目安量 耐用上限量
0-5 M 2.5 (5.0) 25 2.5 (5.0) 25
6-11 M 2.5 (5.0) 25 2.5 (5.0) 25
1-2 2.0 25 2.0 25
3-5 2.5 30 2.5 30
6-7 3.0 30 3.0 30
8-9 3.0 35 3.0 35
10-11 3.5 35 3.5 35
12-14 3.5 45 3.5 45
15-17 4.5 50 4.5 50
18-29 5.5 50 5.5 50
30-49 5.5 50 5.5 50
50-69 5.5 50 5.5 50
70- 5.5 50 5.5 50
妊婦付加量 1.5
授乳婦付加量 2.5

参照:
日本人の食事摂取基準(2015 年版)脂溶性ビタミン (pdf)
日本人の食事摂取基準(2010 年版)ビタミン D (pdf)