地中海食による心血管疾患の一次予防

 地中海食による心血管疾患の予防効果を検討した PREDIMED Study の成果が New England Journal に掲載されました.単に脂質を制限するよりもオリーブオイルやナッツを摂取したほうが心血管疾患の一次予防に有効であったとする結果です.地中海食には胡桃の成分であるαリノレン酸が豊富に含まれており,酸化ストレスや炎症,内皮機能障害などに影響するからではないかと考察しています.



地中海食による心血管疾患の一次予防

Ramón Estruch, M.D., Ph.D., Emilio Ros, M.D., Ph.D., Jordi Salas-Salvadó, M.D., Ph.D., Maria-Isabel Covas, D.Pharm., Ph.D., Dolores Corella, D.Pharm., Ph.D., Fernando Arós, M.D., Ph.D., Enrique Gómez-Gracia, M.D., Ph.D., Valentina Ruiz-Gutiérrez, Ph.D., Miquel Fiol, M.D., Ph.D., José Lapetra, M.D., Ph.D., Rosa Maria Lamuela-Raventos, D.Pharm., Ph.D., Lluís Serra-Majem, M.D., Ph.D., Xavier Pintó, M.D., Ph.D., Josep Basora, M.D., Ph.D., Miguel Angel Muñoz, M.D., Ph.D., José V. Sorlí, M.D., Ph.D., José Alfredo Martínez, D.Pharm, M.D., Ph.D., and Miguel Angel Martínez-González, M.D., Ph.D., for the PREDIMED Study Investigators

N Engl J Med 2013; 368:1279-1290

要旨

背景

 観察コホート研究と二次予防試験は,地中海食の順守と心血管リスクとの間の逆相関を示した.我々は心血管疾患の一次予防のためこの食事様式の無作為化試験を実施した.

方法

 スペインにおける多施設で我々は心血管疾患リスクが高いが心血管疾患に罹患していない参加者を3つの食事群の一つに無作為割り付けした.エクストラバージンオリーブオイルを提供される地中海食群,ミックスナッツを低供される地中海食群,対照群で食事脂質を減量するよう指導された群である.参加者は四半期ごとに個別またはグループで教育セッションを受け,割り付けに従って無料でエクストラバージンオリーブオイルか,ミックスナッツか,少量の食品でない贈呈品を受け取った.一次エンドポイントは主要な心血管イベント(心筋梗塞,脳卒中または心血管由来の死亡)の率とした.暫定的な解析に基づいて,試験は経過観察期間の中央値が4.8年となった後に中止した.

結果

 全体で 7447 名(55 歳から 80 歳まで)の参加者が登録され,うち 57 % が女性であった.自己申告による摂食調査と生化学検査によると,地中海食の2群では介入に対して良好な順守が得られた.288 名において一次エンドポイント事象が発生した.エクストラバージンオリーブオイルを提供された地中海食群(96件)およびミックスナッツを提供された地中海食群(83件)の対照群(109件)に対する多変量調整したハザード比はそれぞれ 0.70 (95%CI 0.54 – 0.92) および 0.72 (95%CI 0.54 – 0.96) であった.食事に関連する副作用は全く認めなかった.

結論

 心血管リスクの高い人にとって,エクストラバージンオリーブオイルまたはミックスナッツを提供された地中海食は心血管イベントの発生を減少させた.

参照:
心血管危険因子における地中海料理の効果
メタボリック症候群における内皮機能障害と血管炎症マーカーに対する地中海式料理の影響
地中海式料理と虚血性脳卒中,心筋梗塞,血管死との関連:the Northern Manhattan Study