Meta-Analysis Comparing Mediterranean to Low-Fat Diets for Modification of Cardiovascular Risk Factors

Meta-Analysis Comparing Mediterranean to Low-Fat Diets for Modification of Cardiovascular Risk Factors

Abstract

Background

Evidence from individual trials comparing Mediterranean to low-fat diets to modify cardiovascular risk factors remains preliminary.

Methods

We systematically searched MEDLINE, EMBASE, Biosis, Web of Science, and the Cochrane Central Register of Controlled Trials from their inception until January 2011, as well as contacted experts in the field, to identify randomized controlled trials comparing Mediterranean to low-fat diets in overweight/obese individuals, with a minimum follow-up of 6 months, reporting intention-to-treat data on cardiovascular risk factors. Two authors independently assessed trial eligibility and quality.

Results

We identified 6 trials, including 2650 individuals (50% women) fulfilling our inclusion criteria. Mean age of enrolled patients ranged from 35 to 68 years, mean body mass index from 29 to 35 kg/m2. After 2 years of follow-up, individuals assigned to a Mediterranean diet had more favorable changes in weighted mean differences of body weight (−2.2 kg; 95% confidence interval [CI], −3.9 to −0.6), body mass index (−0.6 kg/m2; 95% CI, −1 to −0.1), systolic blood pressure (−1.7 mm Hg; 95% CI, −3.3 to −0.05), diastolic blood pressure (−1.5 mm Hg; 95% CI, −2.1 to −0.8), fasting plasma glucose (−3.8 mg/dL, 95% CI, −7 to −0.6), total cholesterol (−7.4 mg/dL; 95% CI, −10.3 to −4.4), and high-sensitivity C-reactive protein (−1.0 mg/L; 95% CI, −1.5 to −0.5). The observed heterogeneity across individual trials could, by and large, be eliminated by restricting analyses to trials with balanced co-interventions or trials with restriction of daily calorie intake in both diet groups.

Conclusion

Mediterranean diets appear to be more effective than low-fat diets in inducing clinically relevant long-term changes in cardiovascular risk factors and inflammatory markers.

地中海料理と低脂肪食の比較による心血管危険因子の修飾に関するメタ解析

 2012年4月25日の記事では地中海料理が心血管危険因子を減少させるという内容でした.死亡や心筋梗塞・脳卒中などの臨床転帰については評価していませんでした.今回は PREDIMED study というより大規模な試験の結果幾つかの論文が発表され,そのメタ解析を行った論文を紹介します.残念ながら臨床転帰について評価した論文が1つしかなかったため,臨床転帰についてのエビデンスは得られていません.

 考察の文中の丸括弧は参考文献の番号です.和訳の瑕疵の責任は私にあります.

地中海料理と低脂肪食の比較による心血管危険因子の修飾に関するメタ解析

要約

背景

 地中海料理と低脂肪食を比較した個々の試験からの心血管危険因子に対する修飾のエビデンスは暫定的なままである.

方法

 我々は MEDLINE, EMBASE, Biosis, Web of Science, Cochrane Central Register of Controlled Trial を 2011 年1月まで全体的に調査し,その道の専門家に接触し,太り過ぎ又は肥満の人の地中海料理と低脂肪食との無作為化比較試験を同定し,最低6ヶ月間経過観察し,心血管危険因子の治療目的のデータを報告したものについて.2名の著者が別々に試験の有用性と品質を評価した.

結果

 我々は6つの試験を同定した.2650 名(50% は女性)が選択基準を満たしていた.参加した患者の平均年齢は 35 歳から 68 歳の範囲で,平均 BMI は 29 から 35 kg/m2 であった.2年間の経過観察の後,地中海料理に割り付けられた個人には加重平均からの差においてより好ましい変化がみられた.つまり,体重 (- 2.2 kg; 95% CI, – 3.9 to – 0.6) , BMI ( 0.6 kg/m2; 95% CI, – 1 to – 0.1), 収縮期血圧 (- 1.7 mmHg; 95% CI, – 3.3 to – 0.05), 拡張期圧 (- 1.5 mmHg; 95% CI, – 2.1 to – 0.8), 空腹時血糖値 (- 3.8 mg/dL; 95% CI, – 7 to – 0.6), 総コレステロール (- 7.4 mg/dL; 95% CI, – 10.3 to – 4.4), 高感度 CRP (- 1.0 mg/L; 95% CI, – 1.5 to – 0.5). 個々の試験の間に観察された不均一性は,概して,共同介入での調整試験や両食事群共に日々のカロリーを制限する試験などの制限分析により排除された.

結論

 地中海料理は低脂肪食よりも,臨床に関する心血管危険因子と炎症性マーカーの長期的変化も含めて効果的であるように見える.

The American Journal of Medicine (2011) 124, 841-851

 不健康な食事と運動不足は米国における心血管疾患の主要な危険因子であり,2000 年においては 40 万人以上が死亡している.心血管危険因子管理の食事による別のアプローチが調査された.低脂肪,高炭水化物食は3年以上に渡る体重減少,2型糖尿病の減少,高血圧管理の改善などが臨床試験において示された.しかしながら,心血管死亡の有益性という観点からのエビデンスが欠落している.

 伝統的な地中海料理は,地中海料理は持続的な体重減少に結びつくというエビデンスが欠落しているにもかかわらず,健康的な食事のモデルとしてますます推進されつつある.それには以下の特徴がある.一価不飽和脂肪酸,植物性蛋白質,全粒穀物,そして魚類の大量摂取.またアルコール類を中等度摂取し,赤身の肉類や脱穀した穀物,菓子類の消費が少ないことである.いくつかのコホート研究では地中海料理は心血管疾患や癌,他の全ての死亡率同様,冠動脈疾患や脳卒中の発生率減少に関連している.

 今回のメタ解析の目的は,最低6ヶ月間の経過観察期間があり,心血管危険因子において地中海料理と低脂肪食を比較した無作為比較試験のエビデンスをまとめることである.我々は解析を太り過ぎか肥満で,最低でも一つ以上の心血管危険因子を持つ人に限定した.というのも,正常体重の人における2種の食事の効果を比較した試験が皆無であったからである.

方法

文献検索

 我々は MEDLINE, EMBASE, Biosis, Web of Science, 対照試験の Cochrane 中央レジスタのデータベースを ”diets, fat restricted” および “Mediterranean diets” のキーワードで検索した.我々は論文を公開型臨床試験として索引付けされたものか,無作為化に根ざすものを題名か要約に含むものに限定して検索した.また同定された参考文献リスト,進行中または計画中の臨床試験登録簿,最近出版された論説やトピックのレビューを検索し,更に適格な試験がないかその道の専門家にコンタクトを取った.言語に制限は設けなかった.

試験の選択と品質評価

 2名の著者が別々に試験の適格性と品質を評価した.適格な試験は地中海料理と低脂肪食を比較している必要があり,対象は太り過ぎか肥満で少なくとも一つ以上の心血管危険因子を有するか(一次予防),既に冠動脈疾患が確定している(二次予防)必要があった.また無作為比較したデザインで最低でも6ヶ月以上の経過観察期間を必要とすること,治療目的のデータ,つまり体重,血圧,脂質の変化を報告していることが求められた.我々は地中海料理を次のように定義した.中等量の脂肪摂取(主な脂肪源はオリーブオイルとナッツ類),豊富な野菜,赤身の肉が少ない(牛肉と羊肉を鶏肉と魚に置き換えたもの).低脂肪食は以下のように定義した.エネルギー摂取総量のうち脂肪の占める割合が 30 % 以下を目的としたもの.我々は治療の割付の隠蔽に従って試験の品質を評価した.つまり患者や介護者,臨床評価者にも盲検化していること.また完全に臨床経過を観察した患者の割合,患者利益のために早期に打ち切っていないもの.

転帰とデータ抽出

 2名の著者が別々に,出版された試験からのデータと独自の調査者からの付加的データを抽出した.我々は以下をベースラインの心血管危険因子とみなし,2年間の経過観察後の臨床転帰を目的とした.つまり体重,BMI, ウエスト周囲径,収縮期圧および拡張期圧,HDL コレステロール値,LDL コレステロール値,高感度 CRP 値,空腹時血糖値と食感のインスリン値の平均差である.加えて可能な場合にはどのような臨床転帰も抽出した.

統計解析

 我々は治療効果を蓄積し,無作為効果モデルを用いて,無作為化した地中海料理群と低脂肪群の間のすべての危険因子の加重平均の差を計算した.一つの試験からは危険因子の平均値の偏差である標準偏差が見られなかったため,最初に,平均値からの偏差を与えられたP値に対応するt-分布のパーセントポイントで除して求まる標準誤差を計算した.次に標準誤差に標本数の平方根を乗じて標準偏差を計算で求めた.

 我々は漏斗散布図 (funnel plot) を用いて出版バイアスの存在を調査した.我々はコクランQテストを用いて不均一性を検定し,目的の全心血管危険因子に渡る治療効果の矛盾度 (I2; 研究全体の全分散で,確率よりも不均一性による) を計測した.我々は含まれる試験の品質の要素に従って治療効果を調べるために感度分析を行った.一次予防試験と二次予防試験,共同介入について調整済みの試験と調整していない試験,日々のカロリー摂取量を制限した試験と制限しない試験.データ解析には Stata 10.1 (Stata Corp LP, College Station, Tex) を用いた.

結果

 3650 名の患者を含む7つの試験が適合基準を満たした (Figure 1).同定された試験の1つに Indo-Mediterranean Diet heart Study がある.この試験は 1000 名もの患者を有しながらその妥当性が厳しく疑問視されているため,我々は最初この結果を一次解析の結果に含めなかった.しかしながら,この論文が撤回されることはなかったため,感度分析にこの試験結果を加えて結果が変化するか評価した.我々は Lyon Heart Study については解析に含まなかった.というのは,心血管危険因子がプロトコールにおいて評価されているのみで,治療目的が根本になかったからである.

Figure 1

 相対的に少数の含まれた試験では,全ての転帰の精度に対して標準化した効果の散布図はそのようなバイアスを示さなかった (P > 0.1) が,出版バイアスの敏感な探索を除外した.

 含まれた試験の特性と方法論的品質は Table 1 にまとめた.試験の経過観察期間として2年間のものが4つ,4年間のものが1つあった.PREDIMED trial は未だに進行中であり,平均観察期間は6年間を予定している.我々はこの試験の2年間の観察後のデータをメタ解析に採用した.ただし採血結果は除外した.1年間の観察後のものであり,他の試験では2年後の採血を蓄えていたからである(詳細は付録1を参照のこと).

 個人の含まれるベースライン特性は Table 2 にまとめた.参加した患者の平均年齢は 35 歳から 68 歳までの範囲であった.平均 BMI は 29 から 35 kg/m2 の範囲であった.唯一の二次予防試験があり,心血管疾病の確定した個人を含むさらに唯一の試験でもあった(含まれる個人の 40% にあたる).1つを例外として全ての試験は,自由気ままな生活をしている個人に対して,食生活を変更するのに積極的に同意することを介入するよう求めていた.Daily-Dose Consensus Interferon and Ribavirin: Efficacy of Combined Therapy (DIRECT) trial においては,イスラエルの研究所の職場のカフェテリアでのセルフサービスにおける昼食に対して食材を提供した.2つの試験で両群にカロリー摂取を制限し,1つの試験では地中海料理に無作為割付された被験者にのみカロリー制限を課した.他のすべての試験では2群のうちいずれにもカロリー制限は課されなかった.

 地中海食に割り付けられた被験者の持続率は 85 % から 95 % の間であったが,低脂肪食に割り付けられた群では 78 % から 93 % であった.ベースラインと2年間観察後の間に食事摂取量の平均変化と,ベースラインの食事摂取量とは Table 3 にまとめた.心血管危険因子のベースライン値と2年間観察後の変化とを付録2に示した.

試験間の不均衡型共同介入

 2つの試験では,低脂肪食群ではそうではなかったのだが,地中海料理に無作為に割り付けられた参加者だけが特定の個別プログラムを提供された.これらの試験の1つでは低脂肪食群 (71 分から 102 分) よりも地中海料理群 (64 分から 175 分) において身体運動量が増加した (P = 0.009).PREDIMED study においては地中海料理に無作為に割り付けられた参加者だけが個別に意欲を高めるグループ教育セッションを四半期ごとに受け,1日 30 g のミックスナッツ類か,1週間に 1 L のオリーブオイルを無料で提供された.3つの試験において,地中海料理群か低脂肪食群に割り付けられたかで試験デザインには全く違いはなかった.

体重,BMI, ウエスト周囲径

 地中海料理群に無作為割付された被験者では,低脂肪食群の被験者よりも体重,BMI,ウエスト周囲径がより減少した.2年後,地中海料理群と低脂肪食群の間の体重の加重平均偏差 (WMD は – 2.2 kg (95% CI, – 3.9 to – 0.6, P < 0.001, I2 = 97%) であり,BMI の加重平均差は – 0.6 kg/m2 (95% CI, - 1 to – 0.1, P < 0.001, I2 = 94%) であり,ウエスト周囲径の 加重平均差 は – 0.9 cm (95% CI, -2 to – 0.2, P < 0.001, I2 = 92 %) であった (Figure 2).

Figure 2

血圧

 低脂肪食に無作為割付された被験者よりも地中海料理に無作為割付された被験者のほうが収縮期圧,拡張期圧ともにより順調に低下した (Figure 2).収縮期圧の加重平均差は – 1.7 mmHg (95% CI, – 3.4 to – 0.1, P < 0.001, I2 = 89%) であり,拡張期圧のそれは – 1.5 mmHg (95% CI, - 2.1 to – 0.8, P = 0.03, I2 = 60%) であった (Figure 2).

脂質

 低脂肪食に無作為割付された被験者よりも地中海料理に無作為割付された被験者のほうが,総コレステロール値および中性脂肪値はより順調に変化した.総コレステロール値の加重平均差は – 7.4 mg/dL (95% CI, – 10.3 to – 4.4, P = 0.002, I2 = 73%) であった (Figure 3).LDL コレステロール値(加重平均差 – 3.3 mg/dL; 95% CI, – 7.3 to -0.6; P = 0.3, I2 = 23%) や HDL コレステロール値 (加重平均差0.9 mg/dL; 95% CI, – 1.9 to – 3.8, P < 0.001, I2 = 99%) においては統計的有意差は全く認めなかった.

Figure 3

高感度 CRP

 高感度 CRP (hs-CRP) は低脂肪食群に無作為割付された被験者よりも地中海料理群に無作為割付された被験者のほうがより順調に低下した.高感度 CRP の加重平均差は – 1.0 mg/L (95% CI, – 1.5 to – 0.5, P < 0.001, I2 = 82%) であった (Figure 3).

空腹時血糖値と血清インスリン

 血糖値は低脂肪食群に無作為割付された被験者よりも地中海料理に無作為割付された被験者のほうがより順調に低下した (加重平均差 – 3.8 mg/dL, 95% CI, – 7.0 to – 0.6, P = 0.18, I2 = 97%) (Figure 3).2群間で血清インスリン値に統計的有意差はなかった (加重平均差 – 1.1 microU/ml, 95% CI, – 2.9 to 0.8, P < 0.001, I2 = 98%).

臨床転帰

 唯一臨床転帰を報告した試験があった.低脂肪食群において3名の非致死性心筋梗塞と1名の脳卒中が発生し,地中海料理群においては1名の非致死性心筋梗塞と3名の脳卒中が発生した.死亡例の報告はなかった.

感度解析

 我々が全ての試験について,治療法を隠して割り当てたり臨床転帰を盲検化したりして評価した試験に制限した時でも,点推定値には変化がなかった.メタ解析に Sinth らの試験結果を加えた時でもそうだった.

 一次予防試験でも二次予防試験でも,転帰の点推定値の大部分は地中海料理に無作為割付した被験者を支持した.HDL コレステロール値における差異の点推定値は一次予防試験においてのみ地中海料理を支持したが,二次予防試験ではそうではなかった.ただしこれらの変化は統計的有意差がなかった.

 我々は調整済み共同介入と無調整共同介入,毎日のカロリーを制限した群と制限しない群とを比較したが,どの心血管危険因子においても平均値の変化の点推定値に質的な差は認めなかった.どちらの群においても,調整済み共同介入試験や毎日のカロリーを制限した試験に限定する根拠は全くなくなってしまった.ただし BMI, ウエスト周囲径,HDL コレステロールは別である.

考察

 このメタ解析で利用可能な全ての無作為比較試験で,太り過ぎ又は肥満の個人を地中海料理と低脂肪食とで比較すると,殆どの心血管危険因子と血管炎症性マーカーとは地中海料理に割付された個人でより良く改善した.観察された差異は控えめであったものの,変化の方向性は地中海料理を一貫して支持するものであった.個々の試験全体に渡って観察された不均一性は,調整済み試験デザインに試験の解析を制限することや,両食事群において日々のカロリー摂取を制限することで除去されるだろう.臨床転帰の根拠は結論の出ないままである.臨床転帰を報告した試験が1つしかなかったからである.

 現在の研究は強度と限界を有している.我々は包括的文献検索を行い,増加する心血管危険因子を個人において治療目的のデータを報告している無作為化比較試験を抽出した.それにより我々は幅広い心血管危険因子に対する2つの食事群のインパクトを評価した.正規の検定はいかなる出版バイアスも示していなかったが,相対的に少数の試験が含まれ,出版バイアスの検出力が低いため,そのようなバイアスは確実に除外しきれない.含めた試験のうち2つだけが全ての転帰のうち盲検化した転帰を報告したのだが,含まれる試験の結果は合理的に良いものであった.一つを除く他のすべてが隠蔽した治療割り付けを報告し,90% 以上の追跡率であったためである.加えて試験品質や人口の研究,共同介入を占める様々な感度解析に渡って我々の解析結果が堅牢であると証明された.

 我々の解析にはいくつかの限界がある.たった6つの試験に基づいており,うち3つの試験は同じ著者グループから出版されたものである.我々は解析された転帰について最も著明な差異を観察した.しかしながら,調整済み共同介入試験に解析を限定しても大部分の心血管危険因子は地中海料理群により順調に修飾されており,BMI, ウエスト周囲径,HDL コレステロール値以外には心血管因子の不均一さにとって何の根拠も見いだせなかった.両食事群にカロリー制限を課した試験に解析を限定しても同じであった.

 純粋に二次予防試験に限定した試験が1つだけ同定されたが,我々の結果は一次予防における心血管因子の修飾という点に限定していた.一次予防試験と二次予防試験との間では心血管危険因子の変化のいかなる主要な差異も感度解析では明らかではなかった.そのため,地中海料理は低脂肪食に比べて一次予防だけでなく二次予防にも優れているのではないかと示唆された.

 規定の食事を遵守させるという参加者のクオリティ・オブ・ライフについて言及した試験は同定されなかった.故に,地中海食と低脂肪食に無作為割付された参加者の間での潜在的な生活の質の際についての情報が我々にはない.しかしながら,地中海料理と低脂肪食の持続率が近似しており,生活の質の差はそれほど大きくないのだろう.

 我々のメタ解析の方法論では,心血管因子を一部有益に修飾するかもしれないという地中海料理のいかなる個別の要素にも至らなかった.我々のメタ解析の結果は,個別の食事の要素というよりも全体として特定の食事の型の方に注目してみると,心血管危険因子を低下させるのには地中海料理の不均一なパターンが有効である事を意味する.

 我々が採用した試験は1つを例外に皆地中海諸国で行われたものである.低脂肪食に無作為割付された個人がある程度地中海式料理を続けているかもしれないため,我々の結果の強度に加わるかもしれない.一方,我々の結果を地中海諸国でない国に一般化することへの疑問も出てくる.

 2つの食事間での臨床転帰の差を検出するのに提供された試験は1つもなかった.しかしながら,我々のメタ解析の所見は心血管疾病の転帰に対する地中海料理の効果を証明する前向きコホート研究によって支持されている.自分で食事パターンを選ばせたコホート研究による根拠というものは,しかしながら交絡によるバイアスを受けている.潜在的な交絡を除外するために,患者にとって重要な転帰についての特定の食事の効果を証明する無作為比較試験によるバイアスのない根拠が必要とされている.これまでのところ,地中海料理と低脂肪食の臨床転帰を比較した二次予防で,決して一次予防ではない試験というのは2つしか出版されていない.不幸なことに,これらの試験の1つの主任調査官の整合性について深刻な懸念が生じている.他の試験では,1994 年からの Lyon Diet Heart Studyなど,心臓死と非致死性心筋梗塞を組み合わせた一次エンドポイントは,平均27ヶ月間の経過観察後では 73% (95% CI, 41% – 88%) と印象的に減少している.Lyon Diet Heart Study はたった 41 例の主要転帰イベントの後,利益が明らかになるには早すぎる段階で終了してしまった.早期中止の利益は正味の健康上の利益を過大評価する結果となるかもしれない.加えて,Lyon Heart Diet Study に参加した患者の誰もが一度にスタチン療法を受けるのは難しかった.それゆえ,心血管イベント高リスク患者において,地中海料理の有益性がスタチン療法に次ぐのかどうかは不明のままである.

 我々のメタ解析と2つの二次予防試験の限界のため,公衆衛生の観点からいや増す心血管リスクにおいて個人における地中海料理の実施を行う前に,更なる根拠が必要とされている.心血管危険因子に対して地中海料理において観察された有益な結果と心血管罹患率と死亡率は,最低でもあと1つ,心血管疾患が十分な予防試験で再現されなければならない.

 まとめると,我々のメタ解析は,低脂肪食と比較して,大部分の心血管危険因子と炎症マーカーに対する地中海料理の順調な効果を示唆した.個別の危険因子に対する効果が観察されたものの,広範囲な心血管危険因子に渡る一貫した効果は,最終的に心血管転機に繋がる可能性もある.

付録1

採用した試験の特性

 Table 1 に採用した試験の特性をまとめた.1つの試験では冠動脈疾患と診断確定した患者だけを含めていた (26).1つの試験では肥満か,2型糖尿病であるか,あるいは心血管疾患であると確定診断した被験者を登録した (25).4つの試験は一次予防試験であり,肥満か,運動不足か,閉経後の女性か,メタボリックシンドロームで運動不足の被験者か,新たに診断された2型糖尿病で太り過ぎの被験者か,または心血管高リスク(2型糖尿病か,3つ以上の心血管危険因子を有する)の個人であった.後者の試験では地中海食に無作為割付された被験者は,1週間に 1 L のバージンオリーブオイルを提供されるか,無料のナッツ類 (30g/day) を提供されるかに無作為割付された.この解析のために我々は無料のバージンオリーブオイルと無料のナッツ類に割り付けられた被験者の間の差異なしに,2群を1つにまとめた.

 採用した試験の経過観察期間は2年間のものが4つ,4年間のものが1つあった.PREDIMED trial は現在継続中であり,平均観察期間は6年間の予定である.我々はこの試験では検査値以外の解析には2年後のデータをメタ解析に採用した.検査値は1年後の観察後にしか採取しておらず,他の試験の2年目の脂質値はプールしてある.

試験の品質

 試験参加者の割り付けは5つの試験で盲検化され,1つの試験でもおそらく盲検化されていた.すべての試験はオープンデザインであった.全ての転帰を盲検化した転帰の評価は2つの試験で行われ,検査値の解析のみ盲検化した試験が2つあった.1つの試験では全く盲検化が行われず,1つの試験ではどの転帰でも盲検化転帰評価を行ったか否か言及がなかった.観察から失われ脱落した参加者について全て記述してあったのは1つの試験で,部分的に記述してあったのは3つの試験だった.2つの試験では記述がなかった.6つの採用された試験のうち4つでは経過観察から脱落したのは 10 % 未満であった.有益性故に早期中止した試験はなかった.2名のレビュアーは採用した試験について方法論的質に全て賛同した.3つの試験では欠落したデータを説明してきた方法が不明のままであり,2つの試験では最終値を繰り越す方式であり,1つの試験ではマルチレベルランダム効果モデルであった.